STEA


私は取り敢えず様子を見る事にした。
そうすると、段々とその人間の行動パターンが解ってきた。

その人間が何らかの動作を起こした後、虹色の扉が現れる。
そしてその扉をくぐり抜けると、また別の世界に移動できる・・・
どうやらそういう仕組みらしい。

全く、そんな世界はSFの中だけの話かと思っていたけれど。


その人間は新しい世界へと移動したら、
先ず何らかの形でその世界のニュースを見る。

それからそのニュースに書かれていた場所に行き、
そこに新しく飾られた絵や音楽、文庫や建物等々に目を通すようだ。

中にはニュースが全く無かったり、最後のニュースの発行が
3ヶ月も前だったりする世界もあった。

そんな時その人間は苦笑して(と概念的に感じた)、フラフラと見知った世界を歩き、
何やら感慨に耽っていたようだ。
そのイメージは、私には伝わって来なかったのだけれども。
(頭の中が覗けない人間なんてこれが初めてだったから・・・)

それらの行動が済むと各々の世界に必ずと言って良い程ある掲示板の所に行き、
新作についての感想を書いたり、自分が前書いた内容に返事が無いかどうかチェックしていた。

この世界はとにかく広大で果てが無いようだったけれど、
同じ人間に出会う事はまず無かった。

私は完全にパラレルワールドに入ってしまったのだろうか?
掲示板などを見ると、結構人が多くいるハズなのだが・・・
他の人間と直接会う事は皆無に等しかった。

そして一つの世界でそれらの行動を終えると、
その人間はまた違う世界へと飛び立っていった。

このままではどうにもならない。
私は半ばの焦りから、行動を起こしてみる事にした。



この人間の思考を乗っ取ろうとする