罪深き日曜日

 昨日親戚の子供が遊びに来ました。2度目なのか3度目なのか、兎に角彼は来ました。おばあちゃんと一緒に、目を輝かせて...。
 誰かの声がして襖が開いて、顔を出す男の子。誰だっけ?えーと...、そんな感じの面識しかない僕らですから、少し控えめです。話したこともあまりなかったと思います。でも母から聞いていました。
「なんかね、すごく興味があるらしいよ。音楽とか、楽器とかにね。」
そう、僕の部屋は安物の楽器がところ狭しと並ぶ、彼にとっては宝の山、或いは不思議の国だったみたいです。
 気弱な少年に声を掛けるより先にイタズラっぽい視線で手招きする謎のオジサン...。まず軽い生ギターを渡してみました。彼はそれでも、おどおどとして長すぎる肩のストラップを気にしていました。
「ポローンとやってご覧よ、ポローンとね」と僕。
ガコッココピン....。
「左手を弦から離して、右手でポロ〜ンだよ。」
ポローン...。
「そうそう、いい感じだ。じゃあ次は....」
そんな感じで、夢中で不協和音をかき鳴らす彼。一番簡単なEマイナーってコードを教えようとしましたが、どうやら手が小さくてまだ無理っぽかったので、開放弦3本で出来る簡易Eマイナーにしておきました。その後エレキ(いかす響きだ!)を与え、歪ませて「ハードロックだよん〜」とか、スライド(ハワイアン風)奏法とか、宇宙戦艦ヤマト奏法とか、いろんな魔法を見せてあげました。
 そして小休止...。今度は電気ドラムに興味を持ったようです。スイッチオンでダダドドジャーン!電気なだけにいろんな声とか車の爆音とかも出ます。これはハマってしまったようで、さっきの夢中より輪をかけた夢中です。彼は彼の音楽を彼のロックを 叩いてます。僕はといえば横でそのノイズに意味を持たせるべくベースで合いの手を入れました。ジャズ風、ロックンロール風、童謡風に演歌風。叩きながら夢中の瞳がたまに僕を確認します。僕も笑顔で応戦です。きっとこれは、とっても罪深きこと。この興奮は将来彼をダメな人間にしてしまうかもしれません。でもそれは自然なこと。好きなことを見つけ、夢ばかり追いかける人間は幸せなんですよね。どの位の時間だったのか、僕らの魂のセッションは続きました。帰りに使い古しのドラムスティックをあげました。だめ押しです。
 彼が帰った後、猛烈な眠気が襲ってきました。僕は夜勤明けだったんです。

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