2012



6





6/29






夏という


光に充満した空気が

終わりのない夏休みへの入り口を

隠している気がして

蝉時雨に窒息し

麦わら帽子がひまわりにみとれていた


プールとかき氷

蚊取り線香と線香花火

入道雲

夕立と雨上がりの匂い


夏は冒険だった

いや冒険への予感だった


夏の終わりの寂しさ

宿題の山の脅迫

そんな色合いさえ

夏の一部だったんだ


また何度でも夏は迎えてくれる

そんな気がしていた


ある種の宴

ある種の高揚

恋にも似た衝動を含んだ


ああ

嗚呼

夏だね



・ミゴロシゴッコ


汚れそびれた朝

ヒンヤリとした神聖が

剥き出しの肌と心に触れる


隠しそびれた素直な素顔が

「アイシテクレロ」と涙ぐむ素顔が

胸キュンを散りばめた朝に煌めいている


好きだからキライは叫ばれ

見つけて欲しくてカクレンボは繰り返される


もっと上手に隠しなよ

絶対 見つけてあげるからさ


僕にしか探し出せないサミシサを

僕はミゴロシにするかもしれないけれど


同じ重さのセツナサという波動で

この朝の煌めきの共犯にはなれるさ


汚れそびれた君の朝

ヒンヤリとした神聖が

剥き出しの肌と心に触れる

子宮にも もちろん


あのね


笑えば少し 

喜劇にしてしまえるさ





6/25


絶望に 嘘は少ない



6/24



美しくて退屈な交尾で

完結する平凡があって


純情ぶることも

汚れきることも出来ずに

僕の夜は平凡の遠くで涙ぐむ


腐敗したハラワタを隠した君にしか

引力を感知しない心臓が

わかりやすい演技の底辺に透けた

カナシミに発情した


この喜劇を終わらせる最終楽章の切っ先が

かすり傷を負わせた魂に

愛撫より優しく

断末魔より鋭い

祈りに似た恥辱を垂らす


己が欲望が呪いのように心を逆流する

自己愛が不自然に生理的欲求を攻撃する

吐き気がするくらいに嫌いなのに

愛を乞う滑稽がここ踊る


美しくて退屈な抱擁で

完結したい命がまだ

燃え残っている


6/23



月のない夜のほとんどは 

月の見えないだけの夜だったんだ


6/20





詠み人知らず

誰かのため息


迷い込んだのは奇妙な夏

恋に昇華し得ぬ劣情の

染み込んだ肉片が

夜の前にまだ鎮座している


迷いが充満して

ココロがきしむ気配を

コトバエノグで

今宵も書き殴る


触れたり刺したり

キスしたり憎んだり

そりゃぁまた忙しいもんだ

優しいだけじゃ足りないというから

欠落した引力を

痛みで埋めるしか出来ないんだ


詠み人知らず

命のため息


小さな不幸が太陽から逃れて

夜の暗闇のほとんどを汚してしまっていた


+++


自分以外の何もない奴らが

暇だ 面白くねー とかほざくだけで

あんぐりと間抜けに口を開けているだけで

ナニカとてつもなく面白いものに出会えるかもしれない

とか 

オシアワセでいることを

反吐が出るくらい軽蔑している癖に

そんな確率なんて限りなく絶望に近いゼロだと

百も承知の上なのに


自分だけにはもしかしたら

血の一滴も流さずに

めくるめく未来が降ってくるかもしれないと

信じているっていう程でもないにしても

そんな絵空事を殺せていないということだけで

自分以外の何もない奴らと同化してしまっていることに

ああ



台風一過


反吐が出るくらいに

世界は素敵だろ

なぁ

ボクラの一片



6/18


キスを下さい


秘密のキスを下さい

ホントのキスを下さい


最初のキスを下さい

最期のキスも下さい


素顔のキスを下さい

非売品のキスを下さい


飛び切りのウソで

だまし続けてください

渾身のピエロで

だまされ続けてみせますから


優しいキスを下さい

致命のキスを下さい



6/15


ヴァン・アレン帯




音のない暴発が

宇宙に窒息し

光に満ちた闇が

真空を目指した


ヴァン・アレン帯の

ひ弱な庇護の中で

エーテルの海の波音が

どこまでも透明な

煌めきを奏でていた


スプライトという刹那

愛でも神でもない何か

ノイズにも記号にもなれない心臓が

命を繋ぐ

頼みもしないのに


神秘の一滴

書き下ろしの劣情

一番優しい残酷で

純情をひと思いに


6/14




一番優しい残酷

二番目に優しい残酷


一番残酷な優しさ

二番目に残酷な優しさ


躊躇なく反射神経で繰り出された

一番優しい残酷


残虐な睡魔と戦って

勝っても負けても



一番優しい残酷で

呆気なく刺されたトドメが



6/10


帰り道の永遠


片道人生の黄昏時

コンビニの前にたむろする青春

汗臭い抱擁未満の群れに紛れて

一瞬光っただけの

帰り道の永遠


触れてはいけない季節に

忍び足の捕物帳を仕掛ける

見失った横顔の余韻も確かに

帰り道と永遠


無邪気なスキが絡み合って

泣きべその君の潔い裸の心と

塩辛い頬の純情の落としどころが

帰り道の永遠


失恋とそばかすと泣き笑い

信号待ちの向こう側の物語

エールをかけそびれたその距離が

数秒の永遠に昇華する音が聞こえた


青春の血まみれは

下書きのない勲章になるさ

おめでとう感傷

おめでとう泣きべそ



帰り道を探して

命を浪費してしまうんだ

滑稽を垂れ流してみても

永過ぎるんだ



帰り道と僕と永遠

帰り道と君と永遠








6/7





キレイに嘘で固めるか

露骨な正直を下品に晒すかってこと


発情は恋か

恋は発情を詩情で隠蔽しただけの汚物か

求愛は禁忌か

命は呪いなのか

愛を振り回せば純情なのか

素直は下品か

その子宮で生み出される衝動が美徳で

この睾丸が垂れ流す欲望は糞尿以下であるとでもいうのか

本能は汚れじゃない

詭弁こそ汚物なのだ


美学に酔うのもいい

自分をダマすのもいい

真実の棘を恐れてもいい


だけど

血を流さない言葉は

社交辞令の為の不格好な記号に過ぎない


記号は愛を伝えない

記号は涙を拭いてはくれない




ココロがギザギザなんだ

ゴメン






僕は毒でありたい

君への毒でありたい

優しい毒でありたい

不思議な毒でありたい


滑稽な毒でありたい

本気な毒でありたい

生身な毒でありたい

間抜けな毒でありたい


致死量を超えて見つめたい

寡黙な毒でありたい

致死量を超えて祈りたい

見えない毒でありたい


殺意のように真摯で

絶望よりも少しだけ甘い


僕は毒でありたい

そんな毒でありたい


6/5


青春は残酷なナイフだ






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