2012



3月 或いは 春の幻想


3/30



・底なしの愛でなら 包んでください


3/29


・愛飢え男


愛に飢え 愛に怯える

あいうえおの仮面を剥いだら

舞踏会にはきっとお開きの風が吹く


愛に飢えて尚 愛に怯える天の邪鬼


愛飢え男

書き苦仮孤


夜は孤独を少し甘くする

眠りはサミシサからの解放だ


・オフだと お オフだと  お お前は なぜ もっと前に  お お オフ会とな くく くや じい


3/28


・探しても探してもニュースが見つからない時

人はやっと自分の中のニュースを探し始める



余白にはキス

余韻に口笛


余白には好き

余韻にクチビル


走り書きの純情

即興のウインク


美しい人のため息だけが美しいのは

妖艶の裏表紙に

残酷な体液が沁み込んでいるから


なんだよ

きっとね


余白にはキス

夜更けには口笛


余白にはキス


余韻には… 青空






・冒険の報酬


冒険の終着駅に交尾を置いたことを


惰性の肌の先に禁断を飾ったことを


即席の激情には濁った眼球だけが踊る


神様 僕 新しい愛を発明したんだ


新しい 冒険だよ


上物の夢を蒸留した真白の粉末の煌めく

快楽をオーバードーズしても

錯乱がオーバーフローするだけさ


脈絡は沸騰して

歯磨きがモーツアルトの装飾音符をむしり取った

血のような紅が

命のように滴り落ちた

ポタリっ

ぽたりッと


冒険の報酬に

普遍をねだったけど

見つけかるのは

無常の

無常にしっぽだけだった


だけだったよ




3/25



・百行で愛撫しろ 一行で刺し殺せ


・帰り道のエイエン


夜汽車は銀河ステーションに向っている

僕はやはり 気楽なような 淋しいような

いつもの奇妙な孤独と相席をしいられていた


今すぐ 体を伸ばして横になりたいココロと

このまま 朝を行方知れずに追いやって

永遠の夜を走り続けたいキモチが寄り添っている


2リットル余りの麦酒の余韻が

脳髄の隅に 鈍い痛みとして こびり付いているけれども

ハッピーエンドじゃ割り切れない人生の

皮肉混じりのスパイスとして

無かったことにはしないでおこうと思った

無かったことだけにはしないでおこうとね


目の前で露骨で残酷な欲望が

見せつけるみたいに抱き合っているけれども

そんな若さという野蛮が

永遠の夜の美学に辿り着くまでの時間を

エイエンっていうのさって

モールス信号でウインクをしてやったけれども

別にいいよね

ヤツらが見えない針の痛みを感知する前に

若さとかいう花は

散っちまうものなんだからさ


夜汽車は銀河ステーションに向っている

カンパネルラに会いにいく前に

まだ沢山の忘れ物があるみたいだから

僕らのエイエンゴッコは今夜も途中下車みたいだねと

気怠い哀愁達と降り立った駅の階段から

汚れてるけど愛しいこの地球に舞い降りた

永遠未満な夜を抱きしめてみた

抱きしめてみたんだ



3/24



処刑台の順番待ちで

さっき殺した詩情の亡骸を探している


あの朝ドラのヒロインに 恋に似た感傷を覚えた日々

透けて見えたあの子の 見惚れてしまうほどの笑顔なんだと思う

壊れることを怖れず 抑えることもしないで

欲望のままに見続けた 見続けていた

 

今朝のテレビに添え物のように出ていた彼女は

大人を少しまとっていたけど

僕はまた釘付けになっていた

だけど今度は 見つめ返されやしないかと

少しヒヤヒヤしてしまったんだ


胸ぐらに飽和した想いが充満してきた

僕は一生懸命そいつを解読してやろうともがいた

だけど明白な答えのほんの手前で

思考はまた 言葉を拒んだ

拒んだんだよ


だってさ

成仏したことにした恋だよ

今更 どうすればいいっていうんだい?


処刑台の順番待ちで

痛まない解脱の夢を見る

今度は

嘘を上塗りしない

素朴な最期がいい


いつまでたっても

白状しない核心は

痛いのがキライなんだよ

きっと


痛いのがキライなんだ

この期に及んでもね





・今 舞い降りた詩情を見殺しにしてしまおうと思う 小さな残酷がここにある



3/22


・光は夜を汚している



交通事故の電光掲示板の

死亡者の数がひとつ動いていた

横目で感知した誰かと誰かの絶望

ハッとしただけで痛まぬ心を

ヒンヤリと見つめる心があって


光は夜を汚している



ヘッドライトの散乱した川辺を

風の中で滑るように走る

車窓からしか見えぬ世界と

車窓からでは見えぬ世界が

沈黙のまま交差する


光は夜を汚している



わかりきったことを

わかったつもりでいたことを

ストンとこころに落とすのに

人生のほとんどを費やしているのだと

ビール越しに感じた気がした


光は夜を汚している



サミシイで充満した世界が

張り詰めたまま黙り込んだ世界が

決壊寸前で凍り付いているのだと

錯乱した胃壁に沁みた


光は夜を汚している

光は夜も汚している

光も夜を汚している


光は夜を汚している




・光は夜を汚している


3/16



6L6Gのチューブの

暖色で浮かび上がる仄かな幻灯


呼吸も忘れ眠る

羊水の夢枕

鼓動のビートの

柔らかな揺らぎ

呼吸の風の

絶世のララバイ

宇宙と繋がる

へその奥の永遠


忘れたことは

知ってはいても


帰れぬことには

まだ気付いていいない



・はみ出し禁止


今日をはみ出したナニカが

未来でもなく昨日でもないどこかに 拡張して

僕をはみ出したボクが

夢でもなく絶望でもないナニカに 拡散する


下書きを無理に無視するより

黄ばんだワラ半紙でもいい

フリーハンドの爆発を

暴走を描けたらいい


明日じゃないいつかに

僕に似ただけのボクが揺れる夢


バラ色の苦悩とか

雁字搦めの天国とか

想像を軽やかに粉砕したご機嫌が

まだ偽善や綺麗事の混じらないゴキゲンが

今日の延長線上の

ボクラに内包されたある種の不思議として


検知したんだ

確かに

検知したんだ

僕の錆びたアンテナがね


風が少し動いて

僕は慣れない大人のフリを脱いだ

幼稚は前より純度を増していて

アンプ直結の激情でも

枯れたブルースを気取ることさえ

なくなったんだ



反抗できる若さが

眩しさを失ってから

真昼の迷子達は

群れに隠れてしまったね


覗き合った背中の

無限の連鎖の中に

まだ語られたことのない真理が

見えたってさ

見えたってなんになるんだろう

なんになるんだろうね


風が少し動いて

僕は着慣れた幼稚なフリも脱いだ

何もない春にも予感がさ

永遠みたいな余韻に酔うための

一粒の一瞬に

いて欲しい吐息の主の予感がさ


あったらいいよね


とかさ


3/15


(転)


さっき運命線を左折した指先が

ゆっくりと妊娠線を愛撫している

言い訳みたいな か細いヤメテヨをおびき出して

僕はようやく ため息をひとつ落とせたのさ


ありがちな隠し事の峠を越えたら

ホントの秘密の手前で

待ちぼうけと気取ってみる

だって温度差が

温度差ってヤツが

僕らに体温という愛しさを

知らせてくれるんじゃないか


タクトの描いた円弧のイデアの

とろけるほどの美しさの中で

堕落してもいいよってさ

確かに聞こえたよね


宿命通り三番地

突き当たったら

最後は始まるんだ



運命なら 変えちゃおう

宿命なら 踊っちゃおう


プライドとか 美学とか

そんなの 捨てちゃえばいいんだよ

ぜんぶね


運命なら ちょっとだけ変えちゃおう

宿命なら 踊っちゃおう



3/7



夕焼けワルツ



よく晴れた 午後に住む

剥き出しのままの めまいは

どこまでも続く 碧

悲しいほどの 透明


風が今 呟いた

陽炎 のよな サヨナラ

秘密 ばかりの 玉手箱

開けも しなかった 愚か者


 また 逢える日々の 光遥か 時々夢

 今 ここに いたら 作り話 時々雨

 泣き腫-れ-た こころのすみ 時々闇

 アイシテルを 教えて


残酷な 白日の 

力任せの 愛撫よ

血のような 夜の前

予感におびえる 肌の奥


--- --- --- --- 


よく晴れた 午後の端

剥き出しのままの アノコロ

ため息の よな 刹那

笑える ほどの 薄情


風が今 呟いた

うめき みたいな バカヤロウ

秘密 ばかりの 玉手箱

触れも せずの 虚け者



 産み落とせもせず 噛み殺した 殺し続けた

 産声の ミイラ--達の 呪いの歌

 有りもしない 思い-出幾つ 時々毒

 一人きりの ワルツを


夕焼けが 紅く紅く

痛みのように 燃えたら

空っぽな はずの胸

shall we, shall we dance  ルルルラー



夕映えが 遠くトオク

疼きのように 消えても

空っぽな はずの胸

shall we, shall we dance  ルルルラー


shall we, shall we dance...



3/5


・夜は 静かな抱擁だ


3/4

・さみしさだけだよ 僕らを繋ぐものは





3/2

・さて メロディーがまたひとつ落ちてきて それはとてもありがちな懐古調のヤツなのだけど 

豚野郎を最初から やり直したい僕を困らせている

形に産み落としてあげられないやつらが 僕の中で充満していて 順番待ちの調べに いつも優しく脅迫されている

10〜20曲なのか 定かではない 忘れてたり 急に思い出したり 名前もないやつとかいろいろで

生命力の強いヤツが順番を無視して踊り出す 僕はまだ枯れることを怖れている暇はない 全部吐き出してやりたい

ただ それだけで この意味のない命を抱きしめている



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