2012


今日もあの頃の一部です

10






10/29


 醒めない夢を



ゆ め なら 醒めてと  願うこころに 混じる嘘の

 触 れ ては いけない  子宮の奥の おくのオク


あ い され なくていい  そんな強がり 笑った後の

 か ら あっぽな 胸に  響く 誰かを 呼ぶ想い


  やがて世界は 歌い出す

   恋に焦がれて 花になる

    と ても 容易いひと言が

     永遠のよな 夜に溶けた


さ よ なら をひとつ  おとぎ話に 混ぜてみたの

 わ ら あって くれたら  痛みを少し 楽しめる


  そして世界は 夢を見る

   恋に破れた 朝は来る

    色とりどりの 花も散る

     刹那のよな キスをひとつ


ゆ め では いやだと  泣いた涙の つけた痕と

 あ い され て みたい  駄々をいう胸 抱きしめた


  だって世界は 夢の中

   寝息の海に 揺れながら

    愚かな祈りの 数よりも

     抱きしめ合う 肌に伝う


ら ら らら らららら〜  るるる〜る るるる るるる〜るるる

 ら ら らら らららら〜  夜にささやく 雨のよに 


   やがて世界は 夢をみる

    愛によく似た 夢をみる

     と ても 容易いひと言が

      永遠のよな 夜に溶けた


10/16


・泣き虫


僕は相変わらずいつものように酔っていた

年老いた母を長年連れて来たかったスタジアムで酔っていた

ホーム指定席の年間会員なのだけれど

もう長い距離や急な階段は母にはキツいので

一緒な時は車椅子席に陣取っているのだ

年老いてもはまる人はハマるもので 今では彼女も立派なハーフイヤー会員である

そして

僕は相変わらずいつものように酔っていた

それは僕が酒好きだからという訳ではなくて

(何もなければ 下手をすれば一週間も飲まないこともある)

まだキックオフ直前に辿り着いても比較的いい席が確保出来たころの

小瀬で過ごした日々の中で見つけ それが染み付いてしまった条件反射なのだ

ほとんど勝てもしない試合をビール片手に観戦するという非日常的浮遊感が意外と

気に入ってしまってね

習慣というのは怖いもので 今ではアウエーの試合をスカパー観戦する時は言わずもがな

代表戦テレビ観戦でさえ無性にビールが欲しくなってしまう身体になってしまっていた

小瀬までは徒歩では15分ほどかかるのだがビールの為だけで車椅子を押しての

参戦なのである

試合は昇格 あわよくば優勝さえ決まるかという特別なもので

スタジアムはほぼ満員だった

そして小瀬の魔物は二度の失点にも追いすがる魔法を掛けていた

僕も僕達も魔物の共犯者にもちろんなっていた

ビール三杯 時間が経てば尿意も頻繁にやってくる身体になっていて

試合終了のホイッスルに酔いしれる暇もなく 車椅子エリアから直近のトイレに駆け込んだのだ

スッキリして さてっとトイレを出るとふいに 後方通路から客席に通じる階段の脇でうずくまっている

人影が目に入った

そこはそれ 酔ってなければ気にはなっても通り過ぎていたのだが

僕は立派なほろ酔い人としての完成の域に達していて 何か意識が(ん!?)っという

尋常なものではない感覚を感知してしまい 思わず近寄った

その人は 工合が悪かったとかでは全くなく はたして そのJ1昇格という事実に

感極まって男泣きに泣いていたのであった

「どうしましたか?」

「いや、うれしくてね」

「そうでか、よかったですよね やりましたね」

「いや 甲府に来て十七年なんですが 来年東京に行くことになりまして

こんなタイミングで昇格出来るなんて…」

「東京じゃ そんなに遠くないじゃないですか また来てくださいよ 小瀬に」

「ええ 来ます 来ますよ」

とかなんとか

細かな事情なんて聞いてるほど野暮じゃない

つまりはそういうことなんだ

酔っぱらいは図々しくも固い握手を交わして車椅子席に戻った

それにしても…と思う 昇格もヴァージンでもなく すでに三度目で 

泣くほどでもないだろうにと半分は呆れながら

泣いてまで喜んでくれるその魂がただただうれしくて

今出会った 恐らく取るに足りないであろう出来事を 酔ったままで未整理な言語中枢を駆使して

母に語って聞かせたり 噛み締めてほくそ笑んだり

明日 いろんな人に聞かせてやろうとニヤニヤしてみたりしたのであった


僕は相変わらずいつものように酔っていたのだ


泣き虫はでも嫌いじゃない






10/12


・エントロピーは 無常に向かう





10/11


しずか っということ


秘かに降り積もった雪の夜の

処女雪に染み渡る

あの神秘を帯びた沈黙


今呟いたはずの独り言さえ

ホントに漏らしてしまったのか

定かではなくなって

そして

それでいいのだと

うなずいてしまう

純情によく似た

一途にもよく似た


秘かに降り積もった夜の雪の

処女雪を抱きすくめる

あの淫美を帯びた神聖






10/10




サミシサは命に内包された空洞で

その空虚を 

その空白を埋めようとする

静かでひ弱な衝動が

それがつまり 


生きる 


ということなのではないかと

ふと気が付いて微笑んでしまった


あっ

僕は何か

とても大事なことを

思い出したのかもしれない



いや

僕は何か

とても愚かしいことを

思い付いただけなのかもしれない



ほとんど同時にやってきてさ

どちらも許してこころを抱きしめたんだ



いつになっても消えない

僕らのサミシサが

僕らの鼓動の根源だなんて

可笑しくて

素敵な

天使のウインクだなって

ねぇ

そう思わない?


そう

思わないか…


でもさ


静かでひ弱な衝動か


悪くはない呪文だろって

夜に聞いてみたんだ





10/9


月と子宮

夜と人肌


言葉がキスに勝つことは

恐らく永遠にないのでしょうから


命は恋に流れ

僕はまた

ため息を夜に隠したんです


夜と子宮

月と人肌


痛いくらいにヒンヤリと

そう

指先には勝てるかもしれません


投げキスで

試してみましょうか



10/8



優しいのに痛くて  

気持ちいいのに苦しい

   

そんな言葉を 

いつも探しています  


アイシテイルより静かな風が

夜を振るわせて

詠み人知らずなこころが

投げキスの捨て場を探しています


優しいのに痛くて  

気持ちいいのに苦しい

   

そんな言葉を 

いつも探しています

  

そんな誰かを 

そんな君を

いつも探しています



優しいのに痛くて  

気持ちいいのに苦しい

   

そんな言葉を 

いつも探しています  



10/7



秋は静かな窒息です

 儚く光る窒息です




思いの外冷え込んだ朝の 

寒さに目覚めてしまう悲しみは 

乱れた掛け布団を 

そっと直してくれる 

そんな指先への小さな渇望なのだ 

  

気付かないような静かなそれ 

そう

そして 

気付かれないような微かなそれで 

僕もいたいと 

ひとりぼっちの指先を見つめる 

   

思いの外冷え込んだ朝の 

二度寝の夢の 

夢のまた夢 


最期の朝は 

そんな寒さがいい 

      


10/4



夜が好きです  

静かな夜が好きです   

ただ 眠くなるだけの

静かな夜が好きです  


明日への出口が行方不明になったら

捜索願なんて出さずに

終わらない夜を楽しみませんか


月の満ち欠けに恋をして

白河夜舟の夢宴を踊りましょう

時間切れのない舞踏会では

ガラスの靴はとうに時代遅れです

自問自答を始めた真夜中は

終電を待ち続けて途方に溺れていますよ

きっとね



だから

君が好きです

秘かな君が好きです

ただ 柔らかいだけの

秘かな夜が好きです


夜が好きです  

静かな夜が好きです   

ただ 眠くなるだけの

静かな君が好きです  



・秋は儚さです 儚さの具象です


・美は残酷な刃物です


・汚れた魔法を混ぜた祈りを予言とか言ったりします


今日もあの頃の一部です

明日は宇宙の一部です


僕は君の一部でした

そして

夜は眠りの一部です

サヨナラはキスの一部です


実は

指先は僕の恥部なのです

不意打ちは 衝動の一部です


最初の微睡みが 一番甘いのです

今日は未来のシカバネです


耳たぶは命の一部です


・花には みとれなさい


10/2


10/1

今日もあの頃の一部です










 前月へ



 



戻る?



お家に帰ろうね