2011年

2月 そして 春を夢見る暇もなし

2/19

・傍観者でいることを 人生は許さない

・しあわせは 昨日達の中でしか生きられないのか 

2/14

 

錯覚の後ろ姿

夜通し 病院の椅子に深く腰掛け 微睡むのには適さないその背もたれに 
ようやく身体をバランスさせていた 兄もまた 静かな朦朧の中にいた
五分おきの覚醒に跳ね返る かすんだ目が父の病床をなぞる 容態は安定している
呼吸は人工で補助され 脈も弱いが刻まれ続けている 血圧はあまり上がってこないが
もしかしたら 結構持ちこたえてくれるかもしれない そんなことを思いながら

昨日の午後 急変した容態は 夜には安定してきた まだ入院中の母を 向こう側の
病院に帰し 僕と兄だけが残っていた 僕はその先の出来事を想像出来ずにいた
ただぼんやりと 眠りなのか昏睡なのか ほとんど意識の戻らない彼の傍にいた

明け方近く あの微睡みの中で きっと目の錯覚なのだろうけれども 彼が
上半身を起こし ぼんやりしているのが見えた いや 見えたような気がした
僕はかすんだ目をパチクリさせて もう一度幻覚を確認しようとした
けれども見えるのは 人工呼吸器の操作パネルだけだった
そんな幻覚に近い現象には慣れている それが真実か否かなんてことに
僕の興味は向かうことはすでになくなっていた ただ思った 
魂が抜けかかっているんだなって ちょっと早かぁないかい もっとゆっくりしてけよ
届けるつもりもない言葉が心の中だけの独り言として脳味噌に響いた
そしてまた彼と似たような苦痛に満ちた眠りに落ちた

フロイトが彼の父の死の後にようやく解放させたという あのエディプス王の呪いを
僕はすでに氷解させている 赤ん坊のようにわがままを言う彼を 憎む僕はもう
現れなかった 介護が長引いてもいい 今は苦しくてもいずれ慣れてくるだろう
 母のラーメンとか 好きなもの 好きなこと 残された時間を 少しは楽しんで
命に託された宿題を解けずとも整理してから 悲しいのとは違う 放心に近い感覚が
胸ぐらの辺りに違和感を残している

朝 昨日の幻覚を誰に話すでもなく思い起こす あの様子では まだ彼は自分の状況を
理解はしていない ただぼんやり浮かんでいるのだろうか も一度身体に戻ったか
そこに死があるとして それは容易くは受け入れられるものではない でなければ
この世の薄暗い片隅に彷徨い続ける魂の あの多さを説明出来ない

死して死を知らず

ならば僕は生きて生を知っているのかと

突然小さな閃きのようなものが 小さく冷たい水滴のように 心の水面に落ちてきたのを
感じた

生を 命を知っているかだって? そんなもの知っているヤツを僕はまだ知らないし
知っていると宣っている魂を僕は軽蔑するだろう

そうか 知らなければ 探さなければ 感じなければ
残り時間は少ないかもしれない 
さて

さて

明け方の幻
命の夢

僕はまだ生きている
確証はないけれども
 
  

2/11


願い続ければ必ず叶うような 
 そんな安っぽい夢なら 

  泣きたくなるほど 
   望んだりするはずがない

 

2/9

 オヤジが亡くなりました

通夜

 2/9

 18:00〜

 アピオの昭和

告別式

 2/10

 14:00〜

 アピオの昭和

 喪主 高松学治

 

・人工呼吸器の刻む

人工呼吸器の刻む優しいロンド
微睡む夜に 僕らは死に
そして 生まれる

命の意味を問い詰める残酷を
命は赦し そして ただ揺れている

鼓動は魂の振動で
意味もなく命はイノチなのだと
ただ い の ち なのだと
ただ

人工呼吸器の刻む柔いロンド
微睡む夜に 僕らは生き
死の裏側の朝を 夢見ている
まだ 夢見ている

2/2

・詩人などいない
  後ろ姿に詩人が透けるだけだ

・たぶんかなり 日本代表の活躍に救われていると思う  笑い話にしかできない したくない

・家事とは 捨てることである  人生も また

・オヤジ殿 ようやく食欲が出てきたようだ  オムツ交換さえ慣れれば こんな罰ゲームなんて 大したこたぁないさぁ はぁ〜(は〜と)

 

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