憂鬱な今日の過ごし方への序曲

水の調べ

あなたは自分が好きですか、嫌いですか。凄くイケテルと思うとき、
世界で一番愚かだと感じるとき,ありませんか。ボーっとやり過ごすに
はあまりにも長すぎる“そこ”までの時間。何の意味も無いかも知れ
ない自分という存在。やり切れない脱力感。そんな憂鬱な今日の過ご
し方、誰か教えてくれませんか。

 そこは、薄暗い海の中、小さな、とても小さな、そいつは文字通り
海の藻くず。藻くずなのか、ゴミなのか、それともプランクトンの死
骸か、そんなことさえ、定かではありません。上を見あげれば、光が
薄くきらめいています。藻くずはそれが恋しくて、ほんのひととき夢
を見ていました。どんどん、どんどん、のぼっていこう。すいすい、
すいすい、浮かんでいけるさ。後もうちょっとで手が届く。光のもと
が見えたなら、きっとこの手に掴んでみせる。ふと我に返ると、そこ
は、やっぱり海の中。小さく一つため息をついて、今度は下を覗いて
みました。そこには吸い込まれるような真っ暗な闇がうずくまってい
ました。暗闇は少し怖いけれども、えも知れず魅力的に見えました。
ずんずん、ずんずん、沈んでいこう。しんしん、しんしん、落ちてい
けたら...。暗ーい暗い海の底、そのまだ奥のまだ奥の、地中深くに唯
一人、何も無いという安定...。気が付くと、そこは今度も海の中。
 浮かんで行くのか、沈んで行くのか。止まっているのか、流されて
いるのか。自分の位置も、そこまでの距離さえわかりはしない。藻く
ずは疲れて眠り込んでしまいました。ブクブク、ブクブク...。心地良
い泡ブクさんの子守歌。泡ブクさんだけは全ての謎を知っていました。

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