エイプリルフールの雪の夜に

世界で一番の愚か者は誰か知っているかい?
神様は僕に尋ねた
世界で一番の愚か者は誰か知ってるだろ?
天使達も僕に尋ねた

僕は口ごもってうつむき
そして下界を覗いた
分厚い雪雲の一部が
まるで僕の為のように
ぽっかりと開いていた

小さな家が見えた
小さな窓から彼女が見えた
彼女はまだ祈っていた


もしね、君より先に死んじゃったらさ
祈って欲しいんだ
四月一日に雪が降るようにってね
そんな神様を馬鹿にしたような願い事が叶えられたらさ
僕は生き返ってみせるから
僕は笑いながらたちの悪いジョークで
彼女をからかったことが一度だけあった
確かに一度だけ


世界で一番の愚か者は誰か知っているかい?
神様は僕に尋ねた
世界で一番の愚か者は誰か知ってるだろ?
天使達も僕に尋ねた

小さな家で彼女は祈った
何年も何年も彼女は祈り続けた
起きるはずのない奇跡を願って
彼女は年老いていった

そしていじわるな神様は半分の願いだけを聞き入れて
その年のエイプリールフールの夜更けに
白い妖精を地上に使わしたのだ

世界で一番愚かな願い事は
決して声に変わることもなく
今も世界に染み渡っている
沢山の愚かが世界の悲しみを
生み続け中和し続けている
それを僕らはただ見つけられないだけだ

世界で一番の愚か者は誰か知っているかい?
神様も 神様もまた 涙を流していた


 

 

戻る?

お家に帰ろうね